諦めしらずの功労者、リヒトシュタイナーの軌跡

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  決して華があるわけではない。周囲を魅了する華麗なボールタッチや違いを生み出す圧倒的なテクニックを持ち合わせているでもない。ただ、勝利のためにひた走る。泥臭くチームのために汗をかく。ユベントスらしい選手というのはまさにそんなイメージだろう。

 

  そういう意味でステファン・リヒトシュタイナーという男は近年で最もユーベらしい選手だったといえる。

 

  時にはレッドギリギリの危険なタックルをお見舞いしてカードをもらうこともあった。チームの動きが悪いときは怒りを露わにして怒鳴り散らすこともあった。

 

  しかし、彼の中にはいつだってチームを第一に考える熱いスピリットがあった。

 

  2011-12シーズン、名手アンドレア・ピルロや、後に世界でも屈指のミッドフィルダーへと成長するアルトゥーロ・ビダルらと共にユーベへとやってきたリヒトシュタイナー

 

  無尽蔵のスタミナでピッチを駆けまわり、積極的にゴール前にも顔を出すプレースタイルは当時チームを率いていた闘将アントニオ・コンテ監督のサッカーにもピタリとフィットした。

 

  思えば新スタジアムであるユベントス・スタジアム(現アリアンツ・スタジアム)でユーベの選手として公式戦最初のゴールを挙げたのも彼だった。そして、このゴールからセリエA7連覇という偉業は始まったのだ。

 

  しかし、これまでの道のりは決して平坦なものではなかった。

 

  2015-16シーズン、セリエA第5節フロジノーネ戦に先発出場していたリヒトシュタイナーは試合中に呼吸困難に陥りハーフタイムでピッチを退くことになる。検査の結果、不整脈と診断された彼は今後のキャリアを考慮し心臓にメスを入れる決断をした。

 

  1ヶ月後、チャンピオンズリーグ(以下CL)、ボルシアMG戦でピッチに帰ってきたリヒトシュタイナーはなんと復帰戦にしてフル出場。さらにはアウェーの地で0-1と劣勢に立たされていたチームを救う豪快なボレーを叩き込み、チームを敗戦の危機から救う活躍を見せた。

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  「私は間違いなく怖がっていた。もう2度とプレーできないんじゃないかとも思ったよ」

 

  「幸せなことに私には愛情を注ぎ、支えてくれる家族や友人がいたんだ。それにユベンティーニ以外にもありとあらゆるクラブのサポーターたちが励ましの言葉を送ってくれた。これはサッカーの美しい側面だと思う」

 

  試合後、命の危機に瀕していたときの恐怖を語りつつも、自身を支えてくれた家族、友人、そして世界中のサッカーファンに感謝を示した。

 

  恐らくこの試合を見ていたユベンティーニの誰もが心揺さぶられたことだろう。そして気づかされことだろう。諦めないことの大切さを。

 

  そう、彼はいつだって諦めない。

 

  2016-17シーズン、バルセロナから同ポジションのダニエウ・アウヴェスを獲得したユーベは登録枠の都合上CLのメンバーリストからリヒトシュタイナーの名前を外している。

 

  そのときも彼は自身のSNSで「私には全ての試合とトレーニングのことしか頭にない。それは今までもこれからも変わらない。そう、Fino alla fine(“最後まで”の意)だ」とコメントし、決勝トーナメントでは見事CLの登録メンバーに復帰してみせた。


  そして、今シーズンもまた新加入のマッティア・デ・シリオベネディクト・ヘヴェデスに押し出される形で2年連続のCLメンバー落ちとなってしまった。

 

  しかし、それでも諦めずにまた這い上がるのがリヒトシュタイナーだ。

 

  「今まで以上にこのユニフォームに敬意を持って、自分の全てを捧げるつもりだ」

 

  自身のSNSにこう書き綴った彼は正に有言実行。プレーで自身の価値を証明し、決勝トーナメントからは再びCL登録メンバーに名を連ねることになる。

 

  何度厳しい状況に置かれようとも、自分の力で道を切り開き、不死鳥のように蘇る彼はユーベのクラブモットーであるFino alla fineを正に体現する選手だった。

 

  ユベンティーニの方々は覚えているだろうか?

 

  今シーズンのCLラウンド16、トッテナム戦2nd leg。相手のプレッシングの速さになかなか適応できず、敗北も濃厚だったあの状況でメディ・ベナティアに代わってピッチに送り込まれたリヒトシュタイナーの姿を。

 

  ベテランとして諦めムードが漂っていたチームにいつものように檄を飛ばし、気を引き締めさせると、投入から3分後には同点ゴールに直結するクロスを上げ最終的にチームをベスト8に導いたあのプレーは誰にでも真似できるものではない。どんなときでも諦めないリヒトシュタイナーだったからこそ成し得たことだったのだろう。

 

  リヒトシュタイナーはプレー面だけでなく、メンタル面でもチームに大きく貢献してくれていたことは言うまでもない。意思の強さ、言葉を行動に移す力、そして何より諦めない心。ユーベの選手たちだけでなく、我々サポーター側も彼から学ぶことは少なくないのではないだろうか。

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  迎える新シーズン、彼はプレミアリーグの名門アーセナルへと活躍の場を移すことが決まっている。34歳とキャリアの晩年を迎えつつあるが、どんなときでも決して諦めないFino alla fineの心を持つ彼ならきっと新天地でも成功を収めることができるはずだ。

 

  7年間、ユーベに全てを捧げてくれた功労者に感謝を込めて。


  Forza Stephan!! Grazie mille!!